ときどき更新も何もしていないのに、
いかにも新着っぽそうにRSSが流れることがありますが、
これはFC2ブログ側のイタズラです。ご寛恕下さいませ。


サイエンスゼロ:双子研究・行動遺伝

カテゴリー[ フィクション禍 ] 2007/03/27

番組についてのメモ。

2007/03 ●ネット サイエンスZERO 158回 「ふたご研究最前線 環境と遺伝のひみつに迫る」

・今夜のテーマは双子です
・世界中で双子研究が盛んになっているんです

 でも、海外の研究はほとんど紹介されず。

今夜のポイントはこの3つ
 ・似てる?似てない?
 ・行動を決めるのは
 ・病気予防に生かせ

●双子はどこまで似ているのか

慶應大学文学部教授 行動遺伝学での双子研究20年以上 安藤寿康さんの登場だ
 お太りになったかな

一卵性双生児:小学生のときから研究に協力している学生お二人をご紹介
 見た目以上に、しぐさや言葉遣いが似ていると言われるよ
二卵性双生児:役割分担しちゃうね
 二卵性は、共有している遺伝子の割合は普通の兄弟と同じだよ

 ここで「共同研究 阪大 戸田達史」として遺伝子スペクトルの違い比較図が出る

一卵性は遺伝情報はほとんど同じですが、何もかも同じというわけではございません
 指紋が違う
 手のひらの静脈のパターンも異なる

 環境のちがいで、成長にゆらぎが出るのです

●ここで「相関係数」登場 (似ている度数:完全一致の場合は数値1になる)
身長の相関係数
 一卵性:身長の相関係数0.90 環境要因が0.10
 二卵性:身長の相関係数0.57 環境要因が0.43
つまり、一卵性と二卵性とでの遺伝影響は、差の0.33であるということになる。
50m走の相関係数
 一卵性:0.50
 二卵性:0.36
つまり、一卵性と二卵性とでの遺伝影響は、差の0.14。
身長に比べて50m走では、遺伝影響のほうが少ない、環境によって育ちによって左右されやすいわけだ。

●安藤寿康談:遺伝影響の研究を進めることにより、医療にも貢献できるし、教育的により良い教育環境、より良いしつけや栄養をほどこすことができるようになる。
 ちょっとここ微妙にしどろ。
 空回りは抑えてとりあえず体裁は整えるぞ…みたいな。古傷がうずくような。
 このあたりはやはり微妙…番組全体を「この線でとどめておこう」感が貫いている。
 もちろん、討論番組ではないので「この線でとどめておこう」でやってかまわない。
 でも、やはり微妙に真鍋氏と手塚氏がちらちら怪訝な発言をちらつかせる。
 サイエンスゼロは、制作側的には多くは期待されたくない科学側タイコ持ち番組。あれでいいけれど、でも本当なら、まっとうに番組を作るなら、「この研究は社会的にどのような位置にあるものなのか」あらましをバンと出してみて欲しかった。たぶんNHKスペシャルのスタッフがやると、そういうところは示すんだろうな、とか思ってみたり。


で、むりやり(?)「役立つ研究ですね」とくくる司会者。

... 以下つづき...

...
●場面は変わって、慶應による双子の家族の交流会。
 1〜2才の双子たちがたくさん来ているね。
 日頃からアンケートや家庭訪問などの調査に協力しているよ。

 慶應というブランドネームは強力だもんね

一卵性双生児でも、なんぼか性格が違っている組があるね。
行動や性格の違いに遺伝がどの程度関わっているのか、150組の双子の家庭を訪問調査して、一卵性と二卵性を比較してみるよ。
 一人ずついろいろ簡単な課題に取り組んでもらって、課題の成績や、取り組みの態度などをグラフにして比較したよ。

 で、例の安藤氏十八番V「スーパーでそっくりの行動をする一卵性双生児」のような、「そっくりの誤答をする一卵性双生児」というできすぎなケースのVが流される。
 それに対してさすがに手塚氏から「いくらなんでもたまたまの強調ではないか」っぽい軽いつっこみ入りーの、いや実際に一卵性は細かい違いはあっても大きな部分ではよく似ているのですと返しーの。


●ついで、安藤氏が現在たずさわっている「首都圏ふたごプロジェクト」について言及。
 国の援助つき、首都圏の双子1600〜1700組の協力を仰いで5年間めどにプロジェクト進行中。
 5年も観察させていただけるので、そのぶん行動遺伝の経年変化をも、データとして明らかにすべく。

プロジェクトから紹介されるのは「大人のふたごの観察研究」。
 大人の一卵性双生児においてどの程度「社会的コミュニケーション」が似ているかを見るのだと。
 で、何をするかというと、20才くらいの一卵性双生児男3組女3組を使って、鍋を作らせる。
 片割れ6人1チームで、2チームに分かれて、それぞれ鍋作りでどのような役割分担、社交関係を繰り広げるか、鍋パーティの隣の部屋から観察者がマジックミラーごしに合コンのレポートをつけているという…ちょっとはた目キモイかな、という実験。
結果:2チームでそれぞれ行動がけっこう違っているんだよ、その違いの原因は?

●場面は変わって、東大大学院総合文化研究科助教授 酒井邦嘉氏
 人間が言語を操るときの脳の働き方を調べていなさる

 機能的MRIで、双子の言語脳の活動状態を比較しております
 簡単な文法のテストを解いてもらう。
 文法処理の脳部位、ブローカ野やウェルニッケ野、言語機能の場所はだいたい決まっているが、人によって活動レベルに差がある
 一卵性双生児の場合、有意に脳活動レベルが似ている
 テストの成績も含めて相関性高い
   (ただし被験者は7組のみ)
 言語での結果はこうだが、相関性(双子で似ている度合い)が低くなる脳部位もある
 例えば算数に用いる脳部位は、日本人では個人差が大きく出やすい

●お次は「健康と遺伝」
 阪大大学院医学系研究科・保健学の早川和生
 中高年の双子を対象に研究続けて30年 5000人調査いたしました。
 結果、
 ・コレステロールの値は遺伝の影響が強め
 ・中性脂肪は遺伝より生活習慣が大きい
 ・血圧は遺伝と環境の半々だね
 (これら研究は「正常」とみなされる「健常者」のみで云々していくので、ADHDやアスペルガー、遺伝病などは、はなからオミットするよう研究を設計するっぽい)
興味深いことに、癌は遺伝影響がたいへん少ないっぽい
 調査できた1354組のうち、癌を発症したのは56組。そのなか、双子の二人ともが癌を患ったケースはわずかに1組だけ。
 あとの55組は、双子のかたっぽだけが発病。
一部の遺伝性癌以外は、遺伝で癌になる可能性たいへん少ないんですよ。

 ということは、親や祖父母が癌で死んだから、よりは、癌になる環境や生活習慣、のほうがはるかに怖いわけね。

さて、環境で顔つきまで変わってしまうのはなぜ
 一卵性双生児でありながら、かたやサラリーマン(引退した獣医師)とアウトドア(現役農家)の79才がピックアップされる。一卵性双生児なのに、見た目こんなに似てなくなっちゃったよと。
ここで安藤氏はエピジェネティクスを出してくる。
同じ遺伝子であっても、メチル化など遺伝子スイッチのオンオフしだいで遺伝子そのものの働きが変わってくるんですよと。
そこで提示されるのが、2005年スペインのチームが出した「双子でメチル化の差が出ている染色体写真」 
(マリオ・フラガ:スペイン国立ガンセンター)。

 これがこの番組に登場した唯一の海外データ。
 よく考えると、サイエンスゼロって、たいがい日本国内の話だけしかやんないよね…


安藤氏の締めは、「遺伝か育ちか、どっちかに軍配を揚げることを強制されるような質問をされることがよくあるが、答は”両方”なのであって」
番組の締めは、(真鍋氏はここは台本丸暗記?)個性にどういう環境を合わせればいいのか見出してくれる研究は期待できますね!

●●●小玉7●●●

多様な要因が複雑に干渉する上、この先どちらに進めば適切なのか、影響を受ける生活現場はどうすればいいのか、たいへん掴みがたい分野であり、泥沼具合と見通しの未熟さで「地球温暖化」とよく似た政治的香りが充満してしまいかねない…ね。

この
  サイエンスZERO 158回 「ふたご研究最前線 環境と遺伝のひみつに迫る」
は、
  2007/03 「行動遺伝と倫理と安藤寿康先生」
の、2週間後の放送。
 ふつう、民法なら放送の2週間くらい前に収録して編集して、という段取りなのだけれど、以前、NHK教育に出演なさったかたに伺った話では、放送当日や前日あたりに収録して放送することもあるとのこと、
 収録はいつだったのかな。

 「行動遺伝と倫理と安藤寿康先生」のシンポジウムで披露していた「大人で行動遺伝は顕著になる」の話は、番組にはおくびにも出ずじまい。それどころか、「鍋パーティ」話を出し、職違いの一卵性を出し、した関係で「大人のほうが行動遺伝は少ない」と感じさせる放送内容になっていた。



メタル

[カテゴリ フィクション禍] : 2007年03月27日 
comment(5)


→
13:20 コメントアンカー コメントありがとうございます さんより [ URL ] 2007-03-31 #-《 編集

初めまして。とてもおもしろく、なかなかきついパンチもあるコメントをありがとうございます。このようにちゃんとフォローしてくださっている方がいたとは、驚きです。異分野交流はできる限りしているつもりですが、やはり「ズレ」ていると思われているのか、あまり誰も相手にしてくれないままここに至っています。ですので、もしまともに相手をしていただけるのであれば歓迎です。「指輪」の比喩は個人的にけっこう気に入っており、いろいろと考えるネタの宝庫だと自分では思っているので、どこがバカなのか、言語化していただければ幸いです。なお
2007/03 ・『脳研究の倫理はどこへ行った?』
2007/03 ・『行動遺伝と倫理と安藤寿康先生』
が読めないのですが、もしできましたら送っていただけないでしょうか。よろしくお願いします。
安藤寿康


14:08 コメントアンカー 雨崎良未 さんより [ URL ] 2007-03-31 #MJWiGxv6《 編集

安藤さん、失礼極まる戯れ言にレスポンスたいへん恐縮です。
輪樹=雨崎良未=今は亡きhuman-MLの西松です。
かつてのhuman-MLのように、ゆっくり佐倉統さんや当時のメンバーと交信できる場があればいいんですけどね。

読めない件は、原因は…もしかしたらリンク先のHTMLか、ブログパーツの何かが不具合を起こしているのでしょうか。(いや、これはうちの側で検証すべき話ですね)


02:30 コメントアンカー 安藤寿康 さんより [ URL ] 2007-04-05 #-《 編集

雨崎さん
2007/03 ・『脳研究の倫理はどこへ行った?』
2007/03 ・『行動遺伝と倫理と安藤寿康先生』
の元稿、拝受しました。ありがとうございました。

札幌のシンポにいらしていただいたとのこと、ごくろうさまでした。ひょっとして帰りのエアドゥは同じ便だったかもしれません。

時間超過癖、病識はあるのに直らないのは、プロのスピーカーとしては失格ですね。ただ、ご指摘の私の「問題点」もきっとそのせいだと思いますが、スピーカーとして、あるいはパフォーマーとしての訓練・経験が足りないからなのだと思います。そもそも聞き手に分かってもらおうと工夫する以前に、自分自身の言葉を探すことすら、まだできていません。特に倫理問題や遺伝研究の社会的意味については、あのようなシンポや特別な寄稿の場でしか言語化する機会がないので、洗練にはほど遠い段階です。それでもなんとか言語化しよう、イメージを表現しておこうと意識はしています。それがたとえば「指輪物語」であり、あぶり出しの比喩だったりするわけです。

いいわけはさておき、論点はかなりたくさんありそうなので、まず雨崎さんが特に問題点としてあげておられる「正義」への態度をめぐる「安藤寿康の明日のため 3項目」について。

とても「優等生的」な姿勢を私に求めているのですね。自分自身も相対化し、達観の境地に至れ、と。そうであろうとする自分ももちろんいます。しかしそれでは論点が明確になりません。知能の遺伝、精神病理の遺伝の研究は、すぐにでも差別に用いられます。そういうやばい側面は、お気づきの通り、満載です。そうなる論理的構造、社会的構造は、それ自体緻密に検討されねばなりません。しかし、ちまたの行動遺伝学批判はあまりに表面的すぎ、サイエンスゼロのような紹介番組では、それは完全に隠蔽されます。

しかし、勉強不足・努力不足といわれればそれまでですが、これは一方で膨大な時間を双生児のデータ収集と分析、プロジェクトのマネージングに割かれている一研究者にとって、それを一人でやることは無理です、残念ながら。それだけの思索能力も持ち合わせていません。本当はこういうことこそ、プロの哲学者や倫理学者がやるべきですのに、残念ながら日本にそれができる人は、私の知る限り、いそうにありません。

そこで私としては、ある程度偽悪者(そして偽善者も)の役を演じてでも、自らの立場から論点を明確化する必要があると思ってきました。少なくとも雨崎さんが期待されるような形では、日本的な欺瞞的予定調和にとどまって、本来言語化すべき論点が見えにくくなりはしないでしょうか。もちろん問題点の客観的見直し、十分なシミュレーションは必要です(それには相当な時間と労力がかかるので、だれか手伝って欲しい)。でも当分は、自分の研究から一歩距離を置くことを「せず」、依怙地に「おいらの正義」を探求させていただき、それを叩いていただく機会が欲しいと思っています。雨崎さんご自身がおっしゃるように「倫理問題は、それぞれの「正義」がぶつかったところにこそ、生じるものなのだから」。ぶつかるためには一定の立場にとどまって依怙地にならねばなりません(これって稚拙ですかね)。

そう、遺伝を言うことは「悪」と言われやすい。だから「悪じゃない」といわねばならない。「ニーベルングの指輪」の中の指輪にとらわれた登場人物たちは、それぞれに指輪の所有が自らの存在証明となることを、時には勝ち誇ったように、時にはとらわれの性の悲哀を込めて、歌います。その物語には予定調和的回答は描かれていません。ひょっとしたら予定調和には至らないかもしれません。少なくとも指輪に関わりを持ってしまった以上、それが悪として使われないようにするための理論武装と使い方の模索に少しは苦しまねばいけないと思っています。




08:17 コメントアンカー 雨崎良未 さんより [ URL ] 2007-04-06 #MJWiGxv6《 編集

つづきは「科学のブログ」のほうでやりましょう。
段取りしますのでいましばらくお待ち下さい。


20:34 コメントアンカー amasaki さんより [ URL ] 2007-05-22 #cKjIa1.Y《 編集

つづき その1:行動遺伝研究を、世間や各立場はどう見ているか
http://ep.blog12.fc2.com/blog-entry-730.html

つづき その2:「遺伝教育学」はどう展開するのか
http://ep.blog12.fc2.com/blog-entry-743.html

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