山上たつひこ「光る風」完全版と旧版の違い
カテゴリー[ フィクション禍 ] 2009/07/02
「光る風」2008年の完全版と旧来の「光る風」単行本の内容を比較してみる。
『光る風 完全版』 山上 たつひこ (著) 小学館クリエイティブ (2008/07)
右は昭和47年(1972年)に発行された旧単行本:古書で入手。
■編集担当「フリースタイル代表の吉田保さん」述:
・「少年マガジン」連載当時の扉絵(単行本初収録:物語の一部になっているものあった)をすべて収録。
・原本(少年マガジン)を参照し、ページ抜けを補完。
・トリミングされていたコマも復元。
・出版社によって改竄されていた「ネーム」を元に戻し、著者本人によるチェックも敢行。

■以下、「光る風」完全版との差異を拾ってみた (旧版 > 完全版)
第一章-1:
・「全国をわかせた」 > 「全国を戦慄させた」
これは連載当初、「少年マガジン」の読者層が幼いという想定を考慮して「戦慄」では読み手がわからないだろうと配慮されたものだと思われ。この手の(子供にはわからない言葉だから的な)書き換えは一般によく行われていた。
ほか全体にわたって「れんじゅう」を「連中」に差し替える程度の漢字表記変更は諸処に見られる。
第一章-2:
・「救急車は?」 > 「死体を収容しろ」
「即死です」と確認したあとのセリフを「救急車」と変えてあった理由はなんだろう?
第一章-3:
・「いまのわれわれが省二ににしてやれる唯一の行為だと思うのだがね・・・」
↓
・「いまのわれわれが省二ににしてやれる唯一の行為だ」
第一章-4:
・「なんのへんてつもない」 > 削除
※ なお、「かたわ」の語は普通に新旧版ともに載っている
第一章-5:
・「旧日本軍人団体?」 > 「旧日本軍人の団体?」
・古書店のシーン冒頭1ページが復旧追加されている
第一章-6:
・冒頭の「写真」ページが一枚復旧追加されている
・「れんじゅうのもつ影響力」 > 「彼らのもつ影響力」
第二章-2:
・堀田重吉 > 堀田洋三
これはキャラの名前の取り違えを訂正したもの
第二章-4:
・見開きのページが一ページに縮小されていたのを見開きに復元
第二章-8:
・建設現場のコマ > 建設現場の写真プリント
・「私の上司は〜〜米軍がからんどるとは知りませんでした」
↓
話者がすげ変わっている 医師のセリフ > 憲兵のセリフ
・「ただおまえたちは命令を忠実にまもっておればよい!」
↓
「お前たちはなにも考えるな」
第二章-16:
・朝鮮戦争に関する引用部位について、出典が訂正されている
松本清張「日本の黒い霧」
↓
矢内原忠雄編・岡義武稿「戦後日本小史」
第二章-17:
・欠落したモノローグを復刻
「シビリアン・コントロール
の崩壊と
軍需産業の拡大である −− 」
第二章-18:
えーと、旧版は下巻p209が順番間違って印刷されてる。
最終回:
・「同志金城だったのか」 > 「同志寺島だったのか」
キャラの名前の取り違えを訂正
・ラストシーンの見開きは、見開き用と単ページ用の2バージョンが存在するらしい


「光る風」完全版は、旧版当時の乱れた写植をそのまんま用いている箇所も多々あるので、ネームすべてを張り替えたというわけではない。
ざっと見てみた範囲では、作品の意味を変えるほどの「重要な」差異は認められなかった。
ページの順番ミスに関しては、これは「重要な」差異ですな。やってはあかん間違いです。
(自分もやられた覚えがあるが、そゆのはえらいショックになるですよ)
■以上、「光る風」新版(完全版)と旧版の違いを拾ってみた結果でした。
ざっと見ただけなので、まだ見落としはあるかと思います。
ほか、連載当時の表紙がすべて復元されているのも時代の空気バリバリで見ごたえ十分。
『光る風』という作品については、詳しくは隣のエントリに記しておきました。ご参照下さい。

[カテゴリ フィクション禍] : 2009年07月02日
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