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ミトコンドリアDNAで相性判断 血液型占いをかえる

カテゴリー[ 書籍メモ楽屋用 ] 2009/04/15

 はいはい、こちらのご本は 「読む必要はない!」を通り越して、「科学ぶったゲテモノを見てみたい人はぜひこのトンデモ本をご覧下さい」にまで逝ってしまった珍本だ。

◆ミトコンドリアDNAで相性判断 血液型占いをかえる

 『ミトコンドリアDNAで相性判断 血液型占いをかえる』
 徳永 隆司著 海鳥社 (2008/12/17)


 以前、「うさ女」なる”なんちゃってポップ脳科学”についてコメントをいただいたことがあった。
 リンク 『うさうさ右脳左脳占い』
 まあ、その”占い”に関してもなんぼか頭痛かったんだけど、その時に「そういえば”ミトコンドリア占い”」ってのもあったなぁと思い出してぐぐって出てきたのが、
 瀬名秀明( パラサイト・イヴ)×ブライアン・サイクス( イヴの七人の娘たち
のミトコンドリア小咄だった。

2007/09
リンク 夕刊フジBLOG:瀬名秀明「イヴのみる夢」(1) ミトコンドリア占い
ブライアン・サイクス談:「ぼくはこれまで、つき合ってきたガールフレンドから毎回ミトコンドリアDNAを採取してきたんだ。驚いたことに、全員が同じDNAタイプなんだよ。これからはミトコンドリア恋愛占いが流行する」


 さらには、今回取り上げてしまう『ミトコンドリアDNAで相性判断 血液型占いをかえる』なる書籍も検索結果でひっかかってきたもんで、「サイクスの言うこともわからんでもないし、とりあえずこの流れで何がどう動いているのか見ておこう」と思って発注して届いてみれば、ちゃぶ台5〜6個ひっくり返したくなるような***な内容の書籍が届いてしまった。

... 以下つづき...

...
 まあ、最初からあくまで「占い」のポーズを採っているという免罪符がある気楽さからかもしれんが、この本マジわけわからん。

 うすっぺらい仕様の書物で、内容も薄っぺらい。
 前半は、相性判断とはほぼ無縁な「ミトコンドリア・トリビア集」でお茶濁し、というか、水増しというか。この方面の科学的知識に乏しい読者をテキトーに威光暗示でメクラませるだけの、内容的にはタケウチクミコレベルの”科学的”ツマミを並べただけの章が延々続く。”科学的”表現の良し悪しにも全く無頓着で(陰謀論、願望変異、間違った進化心理学講釈・・・)下手するとPC的腐臭を放ちかねない勢い。

 この本で「必要な部分」は、はっきり言って「あとがき」の2ページだけなんですよ。

p.148
 このようにして、決定した私のタイプはM7でした。M7タイプは東南アジアに拡大し、日本には主に沖縄などを経由して入ってきたタイプですので、私が夏の暑さにたいへん強いのは、そのためだと考えています。このようなしっかりした科学的なタイプ分けを千円以下でできるように、現在研究を進めているところです
p.149
 タイプ分けが簡単にできるようになると、私たちのミトコンドリアのタイプトコンドリアのタイプに関するたくさんのデータが得られるようになり、それらのデータを集めたデ:タベースを作ることができます。そうなると、そのデータベースを統計的に解析することによってさらに緻密な相性判断やそれぞれのタイプの詳細なルーツをたどることができるようになることでしょう。

2008年10月14日
ミトコンドリア・ルーツ研究会 工学博士 徳永隆司

 工学博士が、自分が開発しようとしているメカの宣伝用に、この本を書きました。それだけ。
 あとは(トンデモをつついて楽しむ性癖がない人は)見る必要はない。

 そもそもこれは「ミトコンドリアのDNA」であり、「母系」でしかないわけで、ヒトの大半を占める「核DNA」の話ではない。このおじさんはmtDNAしか眼中にないというわけなのかな?
 さらには、自分のように「バテレン男の血」が入るようなイレギュラーな要素は一切無視されている。ちょっと多様めなポーズをとっただけの、あくまで「日本人のDNAという誤謬」みたいなお遊びでしかない。
 → 『 日本人の遺伝子 』

UUUUUUU

 まずもって、彼の話のネタは、学術論文ではなく市販のポップ科学書が中心であり、そのような状態でも全く気兼ねしないという神経であり。
 例えば 『DNAから見た日本人』 スペクター『99%は遺伝子でわかる!』 ドーキンス『利己的な遺伝子』『女は男のどこを見ているか』『オシドリは浮気をしないのか』竹内久美子『遺伝子が解く女の唇のひみつ』『パラサイト日本人論』モリス『舞い上がったサル』ミラー『恋人選びの心』リドレー『ゲノムが語る23の物語』バス『女と男のだましあい』サイクス『イヴの七人の娘たち』山元大輔『恋愛遺伝子』 ・・・

●サイクスの話を出しながら、サイクスがミトコンドリア占いの言い出しっぺに近い位置にいるということには言及しないし、
 リンク 瀬名秀明「イヴのみる夢」ミトコンドリア占い

●アイスマンのミトコンドリアの話を出しながら、アイスマンのミトコン障害の話には触れずに「元気に子孫を残した」などと処理してしまっているし、
 → 『 アイスマンのミトコンドリアゲノム 』
 → 『 アイスマンと妄想 』

つまり、ものすごくこの著者おじさんの知識は「市販の市井向け一般書籍からのみ」っぽい。

●あ”−、いや、彼の研究とかなりかぶりそうな「市販の市井向け一般書籍」に”ダダモ博士の血液型健康ダイエット”ってのもあるんだが、それも参照していないっぽいか。
 リンク ダダモ博士の血液型健康ダイエット
 ダダモ博士の「人類の移住コースと血液型」の話を混ぜればそれなりに面白く展開できただろうに、なんだかな。

 ん? もしかすると、サイクスの占いやダダモの論については、「知っていて言及しなかった」可能性があるのか。つまり、彼はあくまで「自分が言い出しっぺである」というポーズに酔いたい、とか?

 でさー。異分野の専門家との交流ができている気配はないし(やっていい表現と良くない表現について把握できていない)、まして異分野の論文を見ている気配もない。
 ふだんそのような配慮をしなくても威光暗示でごまかせてしまうような、異分野に頓着しなくても業績には関係ないような、職場やポジションにいなさるんだろう。

 これと同じ匂いは、工学屋や化学屋の語りでよく出くわすような気がする。
 → 「仏教の共生思想と科学技術」
 → 『 武田邦彦ワンダーランド 』
 あー、遺伝子工学屋やIT関係でも見かけるかな。
 →「安田喜憲」がらみのお話
 そうか、「解析屋」の語りにありがちなタイプとして、くくれるのかもね、この手のは。

UUUUUUU

 当該書の後半、「相性判断」の内容については、本書専用の特設サイトが公開されているので、そこでかいま見ることができる。
 リンク ミトコンドリアDNAで相性判断
 サイトのアドレスはもう科学であることを通り越して「mito-uranai66.com」。完全に「占い」を標榜してしまっておりますな。

 女の場合は、フローチャートで「ミトコンドリアのタイプが判断できる」とやってしまう。
 リンク 女性の場合は、下記の図の問いにYes Noでこたえて判断してください。
 男の場合は、先方のサイトにあるようなぬるいイラストで描かれた顔かたちで、「ミトコンドリアのタイプが判断できる」とやってしまう。(書物には「男用」の顔かたちが描かれた一覧が載っている。サイト上にはこの一覧イラストは置かれていないらしい)
 おーい。
 簡単なフローチャートと、似顔絵。
 肝心のミトコンドリアを検査せずして、これで判断しろと w
 図示された顔かたちにしても、どのような特徴を元にして描かれた相貌であるのか、具体的な判断基準は示されていない。手がかりは、すんごいおおまかな、ぬるいイラストだけ。

 また、紹介されるミトコンドリアのタイプの根拠に関する記述にしても、
p74-76「性格や適職などについては、調査をお願いした人の科学的なタイプ分析の結果とアンケート結果、さらにそのタイプが多い国の国民性などを参考にまとめました。」

と記してあるだけで、「いつ、どこで、誰が、どのようにして、どんな結果が出たからこう解釈したのか」さっぱり明示はされていない。おもきしひとりよがり。「血液型占い」を引き合いに出す以前のレベルだ。
 著者さんは、これから先、研究が進めばもっと確実なことが言えるのだ、と言いたいんだろうけれど、それ以前にこのような出版をやらかす神経では、立派な成果をものしても良い結果に至るとは思えないのだが。

Dタイプ
 寒さに強く、長寿の人が多いようです。
 家庭を大切にするやさしい性格の持ち主です。勤勉でよく働きますが、蓄財に走りすぎることもあります。
適職
男性 農業関係、製品開発、工場技術者、スポーツ関係
女性 調理師、秘書、法律関係、科学者

Bタイプ
カラッとした痩せ型の人が多いようです。
 新しさ(流行)を好み、常に冒険心に富んでいます。
 チャレンジ精神が旺盛で、失敗を恐れず、常にプラス思考で、嫌なことがあってもあまり気にせず、前向きに進みます。
適職
男性 芸術家、新聞記者、自営業、政治関係、販売・営業関係
女性 芸能関係、飲食業、情報・通信関係、宗教関係、服飾関係

 これのどこが科学なのか。
 ※ この本によれば、自分はBタイプということになる。当たってない。orz

 ていうか、占いや相性判断自体まで、ナメてないか。
p124
 女性の九タイプから見た男性タイプの相性判断をしています。すばらしく相性の良い関係(●●●●)から、努力してもムダな関係(××)までを記号で表示しています。


 この手の「科学的相性診断」については、この『ミトコンドリア相性診断』も例に漏れず、前からうちのサイトに晒してあるこの一文がまんまあてはまるので、気持ち悪いったらございません。
→ 『 恋愛の科学 』
 ┗「免疫タイプによる恋愛の相性判断」←これらは「誰にそそられやすいか」はあらわしてはいても「その人と相性良く暮らせるかどうか」ということを示してはいないことに留意

 あー、なんかけったくそ悪い。

 仏道の科学素人さんがたに、進化心理学を見ろよと言っても、素人がまずかじろうとするのはポップ進化心理学の一般市販書だろうし、そんなの読んでも下手すりゃこんなけったくそ悪い「無明にはほど遠い」仮相にまみれて終始しかねない。
 どうすればいいんだろうか。



メタル


[カテゴリ 書籍メモ楽屋用] : 2009年04月15日 
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