堀 達也『北海道知事という仕事』
カテゴリー[ 書籍メモ楽屋用 ] 2008/07/05
かっこかわいい一冊。
『北海道知事という仕事』 堀 達也(語り) 寿郎社 (2003/06)
>拓銀の破綻、道庁不正経理の発覚、狂牛病の原因究明、全国に先駆けた「時のアセスメント」の導入…。
>激動のその時、知事として何を考え、どう判断したのか。「苦難」と「決断」の半生を語る。
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ふうっとした、スマートでにこやかな、執事のような感じの知事さんだった。
自分が自分が、というあぶらっこさがない、でも必要な栄養はあるしゃぶしゃぶのヘルシーフードのような。
この本にしても、「我が人生を一冊に著す!」てなもんでは全然なくて、めんどくさいけど頼まれたんだ、インタビューでしゃべったものをそのまんま本にするんならラクでいいよね。みたいなノリで、たいへんすうっとしている。そう、この本に収録されているのは、堀 元知事の、問われ語り。やる気はなかったんだけど、なんかいつの間にか流れで推されて知事になっちゃったんだよな。
前は土木部で森を守ってましたからね、今でも僕に木を植えさせてごらんなさい、うるさいですよ。
士幌高原道路の現場を見に行ったときね。他の役人ならいざ知らず、不自然なコマクサはすぐわかるんですよ、僕はさんざん山歩きをしてきたから。コマクサっていうのはさ、瓦礫のところにしか生えないの。他の草と一緒のところなんかには生えない。これは(自然保護派の誰かがわざと)やったなと思ったな。拓銀の破綻については、これ以上詳しく話すのは無理だよ。全部、関係者が健在だからなあ。
小泉さんのは2001年からですから、構造改革を言い出したのは僕の方が二年早いわけ。その意味では、僕が「元祖」なんだよな。
... 以下つづき...
自然保護の人から見たら、ずーっと建設推進派の悪い人だった僕が、「時のアセス」で突然いい人になってしまって、敵役がいなくなったんじゃないのかな。
運動を進めることに荷担する、何かをこの方向に持っていく、ということに参与しようとした時点で、脳力の足りない人は、「依怙地な方策」にしがみついて他の視点や価値観をはしょる方向に動いてしまう。
この場合の脳力は、頭の良し悪しと言うよりは、主に采配力という部分が大きいだろう。
頭がよくても采配の脳力がなければ、
・コマクサを守る善行として、コマクサを犠牲にする
・クジラを守る善行として、宅急便を配送センターから盗む
視野を狭めすぎた末の、良し悪しのバランスめちゃくちゃな突っ走り思考をしてしまう。カルトになるな、自分に酔うな。
頭がよいことにうぬぼれるあまりに、采配力がダメダメな自分の姿が見えておらず、ものごとを浅薄に 「官製エコ偽装」と決めつけてはばからない科学者なんかもいたし。
脳力が足らないと、ステレオタイプで物事を簡単に処理したがることになってしまう。つまり単純化や偏見の行使。采配力のある知事さんは、乏しい脳力のものどもが浴びせてくる単純化や偏見たちに、うんざりさせられることも多々。
でも、この本では苦言も提言もさらっとしている。
p.183
でも、日本人って面白いんだよな。時のアセスが話題になった時に、「これは、外国のどこでやっている事業を参考にしたものか」って聞く人がいたんだよな。そんなの、どこもやっていないんだよね。だって、苦し紛れに自分たちで始めたんだからさ。その時、思ったな。日本人は長いこと、こうやって、どんな小さなことでも外国をモデルにしてやってきたんだなって。もう、そんなことは通用しなくなったんだよな、どっか外国でやっているから正しいってのは。日本がマネする時代から、逆に世界が日本のマネをし始めていると思うよ。もっと自信を持っていいのじゃないかな。
戦時という、価値観の転覆の中でも道理を忘れなかった、世間に吸収すべき道理が普通に息づいていた世代。
己れを滅しても人を思いやる、その結果、悪事に手を染めざるをえない者もいたし、自分だけ悪をかぶって忍を通す人もいた。その采配力の結果は、道理を共有しない異世代からは理解不能な不条理呼ばわりされたりもするのだけれど。
全体から見て、どうであったのか。いや、道理のためなら己れを滅してでも人を思いやるからには、世に真実が明らかになる必要はないのかもしれない。
堀達也 - Wikipedia
堀 達也(ほり たつや)は、日本の政治家。サハリン出身。
1995年から北海道知事(第5代)を2期8年務めた。
重要な道政転換期を、そうとは感じさせずにガバッとやってしまったさりげない曲者。
後任は、現知事の高橋はるみさん。印象良く及第点で、道の財政を救うべく鋭意邁進中。
政治ものの書き物に対しては、どんなスタンスであれ「異論」があり「実は悪者」とする叩き評がある。他の視点から見てどうであれ、読み物としては肩の力の抜けた佳品に仕上がっていると思います。
たいへん楽しい一冊をありがとうございました。
[カテゴリ 書籍メモ楽屋用] : 2008年07月05日
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