正面を向いた鳥の絵が話題にありますか?
カテゴリー[ 書籍メモ楽屋用 ] 2007/10/16
不思議な本だった。
『正面を向いた鳥の絵が描けますか?』 (講談社+α新書) 山口 真美 講談社 (2007/7/20)
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著者はこれまでにも多く認知科学、視覚、ものの認識、形状の把握について、書き物を発表してきている手練れの人。
手慣れた書きようで、いろいろな知見をわかりやすくコンパクトにさっさと紹介していく。親しみの持てる書きようで、そつはないし勉強になる。オススメはオススメ。
でも、読み終わって「いろいろな知識が紹介されていておもしろいなぁ」とほっと一息つくはずが、ぱたりと閉じた表紙の絵と再会して、ふと困惑することになる。
え? 正面を向いた鳥の絵の話はどこかにあった???
まえがきにあった「丸っこい絵」の不思議や「描画の男女差」の不思議についても、本文では出てこない、というか、記憶にない。
あれれれ。書きっぱなし? 話振り逃げ? 私が読み飛ばした?
全体に、大きく枠組みをこう構成して話の流れをこう持っていこう、というようなムーブメント?企み?企図?そういうような展望はこしらえないで書かれた本であるような印象を受けるのだけれど。どう全体を持っていくか、ではなく、単に与えられた章立てごとに、この面ならこんな知見があるしと、適度な分量だけ原稿を埋めてつないでいった、そんな「お行儀の良いやっつけ仕事」のような気配がある。
あと、各章末の参考文献も妙な雰囲気をかもしていて。たとえばp75、
p.75
参考文献
『Seeing it differently: Visual processing in autism』M.Behrmann, C.Thomas and K. Humphreys/2006/Trends in Cognitive Sciences 10(June):258-264.
『美と造形の心理学』仲谷洋平・藤本浩一 編著/1993/北大路書房
『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』セミール・ゼキ著、河内十郎監訳/2002/日本経済新聞社
『共感覚 もっとも奇妙な知覚世界』ジョン・ハリソン著、松尾香弥子訳/2006/新曜社
『視覚のトリック だまし絵が語る〈見る〉しくみ』R・N・シェパード著、鈴木光太郎・芳賀康朗訳/1993/新曜社
『脳と視覚 グレゴリーの視覚心理学』リチャード・L・グレゴリー著、近藤倫明・中溝幸夫・三浦佳世訳/2001/ブレーン出版
数冊しか挙がってない。しかも大半は一般市販書のメジャーどころ。だからシロウトさん向けの「さらに読みたい人にはコレ」という本の紹介なのかと思えば、一般向けとはほど遠い英語論文もいっしょに数本混じる。えらい中途半端。なに、本人がこの章を記すのに本当に使った参考文献をあげているのか???だったらもっと数多くいろいろ挙がるのでは…(著者は乳児の視覚世界の研究をしている心理学研究室の教授)。よくわからない。不思議なセレクションになっている。
本自体は、コストパフォーマンス高めな良品だとは思います。

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