ブラウジングライン:世界遺産をシカが喰う
カテゴリー[ 書籍メモ楽屋用 ] 2007/06/12

『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』
湯本貴和、松田裕之編 文一総合出版 (2006/03)
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さて、この方面を論評できるほどの知識もないので、メモ程度のこちら楽屋書き。
●オオカミ導入問題の話は、ほとんど影なし。ほんとにシカがメイン。
●もとより、シカ個体数は常に常に極大から極小まで変動しまくるのが常であったのが日本の生態系史。何かをほいと導入すれば個体数管理が簡単になるなどと安直に見通しを立てるべからず。
■第二章「エゾシカの個体群動態と管理」 梶光一
p.43 「フィードバック管理」について
一定の方法でモニタリングをしっかり行いながら、増えすぎたら捕獲圧を高め、減りすぎたら捕獲圧を弱めるなど、状況に応じて管理方法を変更する順応的管理(アダティブ・マネジメント)です。このことばは、いまやニホンジカの特定鳥獣保護管理計画策定のマニュアルにも取り上げられて日本ではすっかり定着し、海外の研究者からも注目されるようになりました。
この管理方針を理解するキーワードとして、「非定常性」、「不確実性」、「合意形成」の三つがあげられます。エゾシカの個体数は、放置しても一定の捕獲圧をかけても大きく変化して、一定に定まることはありません(非定常性)。生息数も不確実なため、事前に失敗する危険性を周知し、管理の原則と方針、意思決定手順について、関係者と十分な合意形成を図る必要があります。
うん? 順応的管理(アダティブ・マネジメント)は、これは日本発祥と考えていいのか?
欧米さんは
常に常に最適値も含めて状況は流転変遷し続ける、その変遷をも肯定した上で、ずっとずっと変転につきあい続ける、そういう「太極」のような発想はなかったとか???
■第一章「自然保護公園におけるシカ問題」 常田邦彦
p.31
図7は、長崎県五島列島日の島の貧弱な常緑広葉樹林の風景です。シカの届く範囲の葉や林床植物は不嗜好植物であるシダの一種以外すべて食べ尽くされ、枝下高のそろったライン(ブラウジングライン)ができています。このような光景は全国各地の様々なタイプの森林で、ごく普通に見られるようになってきました。
■第二章「エゾシカの個体群動態と管理」 梶光一
p.56
洞爺湖中島や知床岬のほか大台ケ原でも、ササ群落の衰退はシカが高密度となってから生じています。ですから、ササ群落を個体数管理の指標に用いると高密度となるまで見過ごしてしまう危険があります。ササ群落の衰退に先立って、稚樹が消失したり、ブラウジングラインができたりしますので、こちらをシカの個体数指標に用いる方が適切だと思います。
ブラウジング・ライン Browsing Line:食える範囲を食いつくして、目にも明らかに「ここまで食いつくしました、ここまでハゲチョロケになってしまってます」の境界が現れてしまっている状態を指して言う。この場合の「ブラウジング」は、ウェブの閲覧ではなく、「新芽を食べること」を指す語。
この「ブラウジング・ライン」は、グーグルで画像検索してもヒットなし。
テキスト検索でも「ブラウジングライン シカ」で画像は得られず。
しょうがないので、「シカ 食害」画像検索から、ブラウジングラインらしき画像をピックアップしてみる。
... 以下つづき...
...
樹皮がやられている状態。木が枯れてしまう。
シカによる食害の状況 山梨県議会 平成17年11月定例会この樹皮はぎもすごい。
野生動物による農林業被害を防ぐ技術 平成17年農林水産省シカ食害前、食害後。
ミヤコザサが林から消え失せた 平成17年 土佐清水自然保護官事務所…ん? なぜ平成17年で揃う? 平成17年にシカがらみで何かあった?
当該書にあったような、「下枝が刈りそろえられたような状態になってしまっている」タイプのブラウジングラインらしき画像はなかなか見つからないなぁ。
どちらかというと、そこまで行く以前の植樹の苗(稚樹)が食いつくされてたいへんだ、みたいな画像のほうが多げ。
「ライン」として姿を現す以前に、大きな環境変化が生じているわけで、「ライン」が見えるようになったんではもう、遅すぎるんでは…
植生・景観写真集(鹿と植生) 福岡教育大・福原達人
シカの食害圧が高い場所では、草丈は刈り込んだ芝生のように低く、樹木の低い枝は葉や芽を食われて枯れ、独特の樹形となる。もっと低い木は枯死してしまっただろうし、次世代の更新はほぼ不可能と思われる。
もしくは、短期間の急激なエサ事情の悪化で発生するのが、ライン?
ついでに以下は、海外のブラウジングラインの画像。
(あれ、呼称としてはブラウズ・ライン browse line のほうが一般的?
でも、日本語でブラウズラインを検索してもヒットなしだなぁ)
Hill Country Wildlife Management Vegetation 高さ5フィートまで食いつくされている
Deer density and impacts in lowland woodlands ガリガリに痩せこけたシカに、林のブラウズ・ライン(シカの口が届く範囲がすべてハゲチョロケ)、そしてスチュワードシップ
Suburban Whitetail Management of Northern Virginia あ。
日本語では、ふつうブラウジングラインは「ディアー・ライン/ディアライン(鹿の線、鹿摂食線)」と呼ばれているらしい。これならなんぼかヒットする。
ディアラインの画像
シカ食害現地研修報告 森林イントラクター東京会
奈良・興福寺周辺のディアライン
シカによる下層植生の衰退 東京都のシカ対策ん〜、でもヒット数は多いとは言えないようで。
まあ、ブラウジングラインよりはディアラインのほうが、普及している気配。
なぜ当該書では「ブラウジングライン」という呼称を採ったんだろう。
<目次>
湯本貴和 はじめに シカと森の「今」をたしかめる
第一部日本のシカ問題とその背景
常田邦彦 第一章自然保護公園におけるシカ問題 人とシカのかかわりの歴史を踏まえて
第二部北海道のシカ問題と管理の考え方
梶光一 第二章エゾシカの個体群動態と管理
松田裕之 第三章シカはどう増える、なぜ増える
第三部大台ヶ原の現状から「森と人のつながり」を考える
岩本泉治 第四章大台大峯の山麓から
横田岳人 第五章林床からササが消える 稚樹が消える
日野輝明・古澤仁美・伊東宏樹・上田明良・高畑義啓・伊藤雅道
第六章シカによる適切な森づくり
前迫ゆり 第七章春日山原始林とニホンジカ 未来に地域固有の自然生態系を残すことができるか
第四部市民参加による森林再生の試み −− 屋久島からの報告
矢原徹一 第八章シカの増加と野生植物の絶滅リスク
手塚賢至・牧瀬一郎・荒田洋一・湯本貴和
第九章サル2万、シカ2万、ヒト2万 屋久島のシカと森の今

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